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2010年5月11日 (火)

「差別と日本人」 - 辛淑玉・野中広務 - 2009年

差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)   差別と日本人 (角川oneテーマ21) 辛 淑玉, 野中 広務 (著)

 辛淑玉は私と同級になる。1925年生れの野中広務とは、親子ほど歳が離れている。その世代間の対談の合間に辛が解説を書き添えている。しかし、対話部分に比較して辛の書いた解説は濃すぎて、どちらが主体か分からなくなる。在日である辛の感情を隠さない言葉と部落出身である野中の懐の深い言葉から、被差別という立場は共通していても、その姿勢は百八十度異なるものを強く感じる。

 辛は「新しい制度ができると、いつも在日はそこから排除されてゆく」(97p)と発言している。国民保険証の交付、地域振興券の交付等に言及しハンセン病の補償範囲に統治下にあった韓国や台湾が当初は除外されていたことを官房長官だった野中自身も知らなかった。靴を踏まれた人はその痛みを忘れないということか。ふと、高校授業料無料化の対象としての朝鮮学校の論議を思い出す。

 野中が中国が戦後「以徳報恩」の考えで賠償を求めなかったことを紹介している。「日本が残した戦後処理を検証し、整理をしていく」(178p)ことに政界引退後に取り組むということだが共鳴が得られるのだろうか。困難な役回りを政界でやらされて来た彼がまた、地味で困難なことに取り組もうとしている気がする。

 黙々と汚れ仕事をこなす野中に対する親近感と日本に帰化した新井将敬さえも「日本人に愛される政治家」になりたかった「洋服を着たサル」(130p)と罵る辛に対する反感が心に残る。しかし、最後に二人が抱え込んだ家族や親戚との葛藤で締めくくられているために反感は少し失せた。

 

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