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2008年7月21日 (月)

「ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ」 -佐藤克文- 2007年

ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待 (光文社新書 (315)) ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待 (光文社新書 (315))

著者:佐藤 克文
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知人から勧められ読んだ。京都大学水産学科を卒業した著者は私より9歳若い1969年生まれである。高度成長期に生まれた新人類(三浦展)である。しかし、研究内容はどちらかと言えば理学部系で所属する東大海洋研究所沿岸海洋研究センターのサイトの作りは荒いがノリは良い。

○はじめに・・水生動物の行動を把握することの困難さは陸上動物のそれとは比較にならない。同感である。魚はtagなどと呼ばれる「迷子札」(標識)を付けて海に放して捕獲情報を待つ算段だった。最近はarchivel tagという文明の利器が開発され、位置、水深等のデータを蓄えて回収される。著書の調査対象はペンギン、ウミガメ等の大型生物で、著者はこの研究をbio-logging scienceと称し、装着する機器とdeta loggerと呼び、画像まで撮れる。さすがに少々大きい。

○カメが定温動物でトリが変温動物?・・本題から反れるが一番驚いたのは鳥類であるはずのペンギンが深さ200m以上も潜るという事実である。さらに後述される最長潜水時間はなんと27分を越えている。山の付近で発生する上昇気流を利用して飛んでいる鳶や烏が群れをなしている姿をみて海中での魚群の動きを連想することがある。空気と海水の境界面を挟んで鳥たちはいろんな生態を見せる。しかし、海の中での生態は眼で見ることはできない..ほとんどできない。著者はこの研究でその一部を手に入れた。

○研究者は自己主張する・・「高校を卒業するまで教科書に書いている内容が間違っているなどと考えたこともなかった(40p)」という。竹内薫が「99・9%は仮説」で「人間の考えることはすべて仮説にすぎない」と言ったが教科書だって所詮は人間が作ったものである。間違いもあり公正でもない。

○浮かび上がるペンギンと落ちていくアザラシ・・ペンギンが潜水深度によって吸い込む空気を加減して浮力を調節する話はダイビング経験がある者ならうなずける。昔、浮力を調節するBCジャケットを持たず深い場所から波打ち際に向かって海藻を刈ったことがある。浅場では掴まる物がないと下に潜ろうと必死になって泳ぎ、結果としてへとへとに疲れてしまう。ペンギンだって同様であろう。またグライダーの様に海中を上に滑空(?)するペンギンを想像するのも楽しい。アザラシはさしずめウェイトを付け過ぎて水中墜落するダイバーである。

○教科書のウソとホント・・著者はまさに極地での野外調査を経験している。調査に同行した大学院生にとってその経験が教育となっているという。大学は答えを教えるところではない。もがき苦しむことを知ることによって学ぶところである..と思う。失敗学のすすめを思い出す。

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