「若者はなぜ3年で辞めるのか?」 - 城繁幸 - 2006年
![]() |
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書) 著者:城 繁幸 |
かつての企業の人材採用は「なんでもそつなくこなせるタイプの人材(33p)」とせいぜい年齢配分に配慮する程度の一括採用だった。ところが90年代後半から専門スタッフ以外は要員を絞り込み「後は派遣で(34p)」充当することとなる。「『なんでもやります』的な人間は..正社員でなくても派遣社員で充分」となる。企業はコアとなる要員以外は不要となり学生は就職前に「自分探し」を迫られる。それは結果として入社前から彼らに仕事への意識が過度になり易くなる。ここで「昭和的価値観」を持つ上司は意識の高い部下に忍耐を押し付ける。「現在の学生の方がはるかに健全に違いない。(40p)」上司は「年功序列」が「一定の成長を維持すること(44p)」という条件下で成立することを忘れている。
技術革新は技術者を直撃している。生え抜きの技術者が企業を訴えている。東芝、味の素、キヤノン、日立製作所、三菱電機..功績に相応しい地位へ続くレールがいつの間にか途切れていた。「彼らは皆、空手形をつかまされていた被害者なのだ。(82p)」
新規採用を減らす「生首を切らない」リストラは「若者の職が消えてなくなったことになる。(102p)」自民党や民主党のマニフェストに記載された公務員改革に著者は失望している。「若者を切り捨てることで..帳尻を合わせるつもりだった(103p)。」..ちょっと言いすぎ。企業は派遣社員でそれを補う。これも年功序列から見れば新陳代謝に破綻を来たす。後継者の育成が不全を来たしている。「年功序列という制度は職人を育てることができる世界で唯一の雇用形態である。(108p)」
新人を採用せず、管理職だけが増え、現場の人間つまり若者にしわ寄せが集まる。JR西日本の列車事故を起こした運転手は経験1年足らずの23歳だった。若者へのしわ寄せは派遣社員という形で現れ、「安い賃金の連中は子供など作るな(114p)」となる。これが壮絶なパワーを持ち若者を食い物に(しわ寄せ)する国家というリバイアサン(旧約聖書の怪物)である。三浦展氏は著書「下流社会」300万円を超えるとようやく結婚が「可能」になり500万円を超えると「現実」になるとしている。
「あるかないかわからない答えを自分で考える(168p)」教育の欠如が「日本の義務教育に創造性が足りない(168p)」理由のひとつとしている。「不透明な挑戦よりは、確実に答えのあるレールを選ぶ気風を知らず知らずのうちに育んでしまう。(169p)」「与えられたものは何でもやるれるが特にやりたいことのないからっぽの人間(169p)」..痛い!俺のこと!?
| 固定リンク
« 「並握りの旅」其の参 | トップページ | 素顔 »
「07「読む」」カテゴリの記事
- 人生はニャンとかなる! - 水野敬也 ー 2013年(2019.07.09)
- 見通す力 - 池上彰 - 2009年(2019.07.05)
- 雑談力が上がる話し方 30秒でうちとける会話のルール - 齋藤孝 - 2010年(2019.07.04)
- 転職1年目の仕事術 - 千田 琢也 - 2010年(2019.07.02)
コメント