「ウェブ進化論」 -梅田望夫- 2006年 その1
ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書) 著者:梅田 望夫 |
○チープ革命が生む方向・・「道具の普及が私たちの能力をぐっと高めていく(12p)」は良く経験することである。高価な万年筆やランニングシューズに唆されることは多い。著者の言う「チープ革命」がかつては選ばれた人にのみ与えられた環境に近いものが万人にしかもチープにもたらされるという。YouTubeもBlogも玉石混交の「膨大な量のコンテンツの新規参入(12p)」を起こす。そして「玉を見出す技術(13p)」も進化する。間違いなくその筆頭はGoogleである。ネット上で語り合った..情報..が権威サイドが用意する専門家..より質が高い(16p)」という衝撃に繋がる。
○大変化はゆっくりと、でも確実に・・今月、電通は2007年の「インターネット広告費が雑誌を抜いてテレビ、新聞に次ぐ『第3の広告媒体』に躍り出た」と報じた。「英エコノミスト誌は..2008年には雑誌広告を超えると予測(17p)」したが、現実は予測より加速していた。
○ネット世界の三大法則・・著者はインターネット、チープ革命、オープンソースを次の10年への三大潮流として発展を始めたとしている。さらにそのルールを「三大法則(34p)」と称している。そのキーワードは「神の視点」「ネットの分身」「無限大×ゼロ=Something」である。ネット事業者は不特定多数無限大の顧客情報を自動的に収集し、ネット上のウェブサイトは放っておいても金を稼ぎ、1億人から3秒弱を収集しフルタイム1万人の価値を創出することである。
○グーグルの実現する民主主義・・Googleはユーザーから見て端末の「あちら側」に巨大な「情報発電所」を作ってしまった。これが既存のIT企業との相違である。さらに「言語間の壁を取り払う(52p)」ため自動翻訳技術が最重要開発課題となっている。日本語の場合は現状では「使い物にならない」というのが私の感想だが、いつの間にか秀逸な仕掛けが出来上がるのでは..と思わせるのがGoogleである。
○電子メールは「こちら側」に置くか「あちら側」に置くか・・2004年時点ではGoogleがGmailを「あちら側」用意したときのスペースが1GBだった。このblogのスペースは2GBだからさほどでもないが、当時は「エープリルフールに違いない」と言われ、そのチープ革命が実感させた。Googleは「あちら側」で急速に増殖した。
○グーグルとオープンソース・・つい数日前、Microsoft社がWindows Vistaなどの技術情報を公開したニュースが世界中を駆け巡った。この行動の意味が分かりやすく記述されている。Yahooの買収騒ぎの理由も良く分かる。Googleはハードの構築だけでなくシステムソフトウェアまで自作してしまう。他企業と違い5000人の優秀な人材がオペレーションという面白くない「泥仕事を厭わず、自分の手で動かす(71p)」という風土がある。Microsoft社の従来型「こちら側」商売では太刀打ちできない。また、技術情報の公開と言ってもソースコードをオープンにした訳ではない。中途半端である。
○情報共有こそがスピードとパワーの根源という思想・・電子メールは「情報の隠匿を基本とする従来型組織を支援する情報システム(79p)」と切り捨てられた。「モチベーションの高いメンバーだけで構成される小さな組織で、すべての情報が共有されると、ものすごいスピードで物事が進み、それが大きなパワーを生む..常識を破壊するスピード感が出る。(80p)」最大の課題は組織全体の情報が完全に共有されるかであろう。「制限時間内に..できるだけ読む..考えること、やったことについてできるだけ書く..5000人が粛々とやる」というGoogleの気風がなければ実現できない。アイディア時点から情報は既に全員に公開されている(87p)」が、Googleでは「アイディアの起案自身は..評価されない..問題を解決して、動く形にして初めて評価される。(87p)」アイディアを公開できる土壌がなければ始まらない。そして実行には「阻むもの」が必ず表れる。
続く..
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