「人間失格」 -太宰 治- 1948年
人間失格・桜桃 配信元:電子書店パピレス 提供:@niftyコンテンツ |
これも「中学生はこれを読め!」で紹介されている。しかし本当に中学生が理解できるのだろうか。太宰は20歳で思想に悩み服毒自殺を試みるが失敗した。21歳で女給と心中するが自分だけ助かった。26歳では入社試験に失敗し自殺を試みるが失敗した。28歳で妻と心中するがやはり失敗した。20歳代に4度も自らの命を絶とうとした。さらに26歳で鎮痛剤による中毒症となり入院中に妻が義弟と姦通事件を起こしてしまう。
自殺と心中、女性関係そして中毒症と虚弱な体..暗部を一通り備えた生涯とも言える。「人間失格」はそれを十分感じさせる。そして39歳で「人間失格」を執筆し終えた翌月には妻ではない女と入水自殺した。
主人公の葉蔵は妻の衣類を質草にして銀座で飲み歩き二晩も外泊した。さすがに三日目の夜にはアパートの前までは帰って来た。しかし中から母子が楽しそうに父のことを話し合う場面を見てしまう。泣けてくる内容だった。ところが葉蔵は「そこにうずくまって合掌したい気持ちであった。そっと、ドアを閉め、自分はまた、銀座に行き、それっきり、そのアパートには帰りませんでした」となる。目の前に情景と葉蔵の自責の念が見えるような気がする。
「二匹の動物がいました。」と姦通を眼前にみてしまった衝撃を短く強く表現している。葉蔵は「そのとき自分を襲った感情は怒りでもなく、嫌悪でもなく、また、悲しみでもなく、もの凄まじい恐怖でした」と感じた。「無垢な」というより「無知」に近い大切な人を失った瞬間の切なさを感じた。
ブックオフで105円で購入..「中学生はこれを読め!」の旅は続く..
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