「生きるヒント」 -五木寛之- 1994年
生きるヒント―自分の人生を愛するための12章 (角川文庫) 著者:五木 寛之 |
「中学生はこれを読め」から読む。1994年から年一回の間隔で5回執筆されたエッセイ集である。五木は1932年生れだから当時は60歳過ぎ、現在75歳位か..
○歓ぶ・・「よろこび上手」になろうと「一日一回..よろこぶ..それを手帳に書く」「身構えますと、よろこびはおのずからやってくる」「少し上品で文化的なよろこびも、次第にみつかる」とは、このブログとも類似している。努力すればものの見方が変化し、その何かを感じるようになる。そして新たな感覚を手にする。後半で「一日一日と死という目的へ接近してゆく。これが人間の運命です。」や「知的に充実すれば、するほど大きな悲しみをあじわう」はこの本の主題で最後の章で改めて述べられる。
○惑う・・「階段をのぼっていくときには文化は出てこない。のぼりつめて、ゆっくりおりはじめるときに、文化は生れる。」そうであろう。立ち止まったときに見えてくるものは多い。順風満帆では疑問さえ浮かばない。
○悲しむ・・「悲しいことは、今、この地上に、そしてぼくらの周囲に無数にころがっているはずです。」現実に目をつむることが多い。「暗い」ことを語り、「暗い」歌詞を歌うことを私も、そして若い人も何か直視せず、かっこ悪いこととして位置づけ、できれば避けようとしている。ユダヤ人のフランクルがアウシュビッツの極限状態の中で遠くから聞こえるメロディーを懐かしみ、水たまりの中に写った風景に美しさを感じ、必死でジョークを交わした。そして生還した。一方、現代の日本では1998年以降、毎年3万人が自殺している。
○知る・・「どんな有名な評論家が、自分と全く正反対の意見をのべていたり、解説をしていたとしても、その言葉に惑わされるな」とは簡単なようで難しい。マスコミが伝える内容を鵜呑みにしていないか。小泉元首相が退陣しるとともに手のひらを返すようにマスコミの論調は変わってしまった。節操がないとはこのことかも知れない。自分の感覚を信じることは大事だが難しい。
○働く・・労働に対する東洋と西洋の感覚について論じている。「労働の中に喜びを見出す」という考え方は欧米でも少しは通じているかも知れない。だが、東洋では一見、単純な作業に対しても、誇りを見出す。Mr.Childrenの「彩り」を思い出す。「僕のした単純作業がこの世界を回り回って まだ出会ったこともない人の笑い声を作っていく そんな些細な生き甲斐が日常に彩りを加える..」
○想う・・人生論が語られます。「人生に目的なんかないんだ、人生に希望はないんだということを書いている人生論はあまりありません」を読んだとき、ひろさちや著の「狂いのすすめ」を思い出した。サマセット・モームの「人間の絆」を引き合いに出して「人生に意味なんてありません」と言い切る。これには抵抗があったが、五木の場合、押し付けがましくないので、訳もなく受け入れそうにはなる。但し、これも「知る」の章に従えば自分の感覚を信じることとなる。シェークスピアの悲劇「リア王」は三つの「否定できない真理」があるという。生れる時代、親、自分を「選択できない」。生れた瞬間、「死へむかって一日ずつ接近する」。死へ近づく期間は定めら、「寿命」がある。真理を見据え、早く心の準備をしなければならない。死を意識する機会が減っているのは確かである。その延長線上にデスエデュケーションがあると想う。死生学という学問さえある。
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